相続の基礎知識

相続手続には様々な専門知識が求められます。しかし、多くの方が初めて経験する相続で、どの手続きを何時までに行えば良いのか?を判断することは非常に難しいものです。ここでは、相続に関する基本事項をまとめてご紹介いたします。

相続について知ろう

1相続手続きのタイムスケジュール

被相続人の死亡
(通夜・葬儀)
死亡届の提出 区(市)役所
葬儀費用の領収書の整理・保管  
遺言書の有無の確認  
自筆証書遺言書の検認手続き 家庭裁判所
相続人の調査開始(戸籍などの収集)  
被相続人の財産と債務の確認  

3か月以内

相続放棄・限定承認の手続き 家庭裁判所

4か月以内

所得税・消費税の準確定申告 税務署

遺産の分割方法を検討

遺産分割協議の検討・確定 法務局
不動産の名義書換(相続登記)
預貯金などの名義書換や払戻し

10か月以内

相続税の申告と納税期限 税務署

1年以内

遺留分の減殺請求  

2相続分

第1: 遺言書がある場合は、遺言書の内容が最優先されます。

第2: 遺言書が存在しない場合は、下記の順位で法定相続人が相続します。

被相続人の配偶者は常に相続人となります。

※離婚した前夫、前妻や内縁関係の夫や妻は、婚姻関係が成立しないため相続権は発生しません。

第1順位の相続人 被相続人の直系卑属 子ども
第2順位の相続人 被相続人の直系尊属 (子どもが居ない場合)父母
第3順位の相続人 被相続人の兄弟姉妹 (子ども・父母が居ない場合)兄弟姉妹
相続ケースと配分
  相続人の構成
配偶者
子ども
配偶者
父母
配偶者
兄弟姉妹
配偶者
のみ
子ども
のみ
父母のみ 兄弟姉妹
のみ
法定相続人 配偶者 1/2 2/3 3/4 全部      
子ども 1/2       全部    
父母   1/3       全部  
兄弟姉妹     1/4       全部

※子ども、父母、兄弟姉妹が複数人の場合は、上記法定相続分をその人数によって按分します。

法定相続分の留意点

  • 非嫡出子の相続分は、嫡出子の1/2になります。
  • 実子と養子の相続分は同じです。
  • 相続人になるはずだった子が死亡していても、その死亡した子に子 (被相続人の孫)がいる場合は、その孫が子の相続権を引き継ぎ、第1順位になります。(「代襲相続人」といいます。)
  • 兄弟姉妹についても代襲相続の制度 が適用され、相続人になるはずだった兄弟姉妹が死亡しており、その兄弟姉妹の子(被相続人の甥、姪)がいる場合は、その甥、姪が相続人となります。

3代襲相続とは

代襲相続とは、本来、相続人となるべき人がすでに死亡している場合に、その取り分を本来の相続人に代わって相続できる制度です。
相続人となる方が生きていれば、または重大な過失を犯さなければ、ゆくゆくは孫として自分の財産になったであろうから、その財産を次の世代に受け継げるようにという配慮から代襲相続が認められています。
代襲相続者が相続する割合は、もともとの相続人の割合と同じです。代襲相続は、あくまで、相続人の子や孫に対して認められた制度ですので、被相続人の配偶者や、親・祖父母などの直系尊属は代襲相続することができません。

代襲相続の代表例

本来、相続人となるべき子Aが、被相続人の死亡時点で既に死亡していた場合、孫Cが子Aが取得すべき相続権を子Aに代わって相続します。従って、遺産分割協議などする場合は、配偶者、子B、孫Cの3名で行うことになります。

4遺留分の制度

遺留分とは、相続人が当然取得できるものとして、民法が保障している最低限度の相続分を「遺留分」といいます。

生前贈与・遺言でこの遺留分を侵害してもその贈与・遺言は無効とはなりませんが、侵害された相続人は侵害した他の相続人などに対し、その侵害された部分を請求することができます。

遺留分減殺請求権は、相続の開始および返還すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内に行使しないと時効によって消滅してしまいます。また、相続開始から10年を経過した場合も消滅してしまいます。

遺留分の権利を主張できる者
  • 1.配偶者
  • 2.直系卑属(子や孫など)
  • 3.直系尊属(父母、祖父母など)

※なお、兄弟姉妹は法定相続人ではありますが、遺留分の権利は主張できません。

遺留分を主張できる割合例
配偶者のみ 子どものみ 父母のみ 兄弟姉妹のみ
遺留分2分の1 遺留分2分の1 遺留分3分の1 遺留分なし
配偶者と子の遺留分 配偶者と父母の遺留分 配偶者と兄弟姉妹の遺留分
4分の1 4分の1 3分の1 6分の1 2分の1 なし

※遺留分のある相続人が複数いる場合の各相続人の遺留分は、全体の遺留分に相続人の法定相続分を掛けたものとなります。

5寄与分とは

寄与分とは、共同相続人のうち、遺言者の事業に関する労務の提供、財産上の給付、療養看護などにより、被相続人の財産の維持・形成に特別に寄与した人は、遺産を分割する前に相続人全員の協議を経たうえで、寄与分として遺産の中から相当分を取得することができます。

寄与分をどのくらいにするかは相続人の協議によって決めます。 まず、被相続人の遺産の中から寄与分を控除して、残りの遺産を元に相続人の相続分を決めます。

寄与者は、相続分に寄与分を加えたものが相続分となります。

相続人の協議で寄与分を決められないときは、家庭裁判所に申し立てをして決めることになります。

家庭裁判所は、寄与の時期や方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を決めます。

6特別受益とは

特別受益とは、遺贈、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として生前贈与があった場合、その特別な利益を受けた人は遺産分割に際し、相続開始時の相続財産額(遺贈される財産を除く)に、その遺贈・贈与の価額(「特別受益分」といいます)を加えて、各相続人の相続分が計算されます。これは、相続人の間で不公平にならないようにするためです。

特別受益がある場合は、被相続人の死亡時の財産に生前に贈与した特別受益分を加えます。

相続財産に特別受益を加えたものをみなし相続財産といいます。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。

このみなし相続財産の額をもとに各相続人の法定相続分または遺言による指定相続分を計算します。

特別受益者は、上記の計算で算出した相続分から特別受益分を差し引いた額が相続分となります。